
はじめに 👋
こんにちは。スタメンでソフトウェアエンジニアをしているyunbooです。
AI 技術の急速な発展により、プロダクト開発の現場も大きく変わろうとしています。しかし、単純に AI ツールを導入するだけでは、その真価を発揮することは難しいものです。
この記事では、私たち Watchy が実践している、AI 活用によるワークフロー改善について紹介します。プロダクト開発における根本的な課題を解決し、AI を「使用する」だけでなく「活用する」ためのアプローチをお伝えします。
プロダクト開発における根本的な課題 🤔
「なぜ作るのか」が不明確な開発要求
プロダクト開発の現場では、以下のような曖昧な要求に遭遇することがよくあります。
- 「これ作ったら売れる」
- 「お客様が欲しいと言ったから」
これらの要求は一見もっともらしく聞こえますが、詳細を聞いてみると実は作らなくても解決できることが多々あります。「なぜ作るのか」(Why) が不明確なままでは、真に価値のあるプロダクトを作ることはできません。
背景情報の属人化という問題
この問題の根本には、背景情報の属人化があります。
- セールスは商談以外の業務も多く、重要な顧客の声が記録・共有されないまま失われる。
- チーム全体で「なぜ作るのか」を腹落ちして開発できない状況が生まれる。
このような課題を解決するために、私たちは AI を活用したワークフロー改善に取り組んでいます。
AI を活用したワークフロー改善:フェーズ 1 🎯
目標:「なぜ作るのか」を可視化し、チーム全体で共有
フェーズ 1 では、営業・顧客対応から PRD(Product Requirements Document)作成までのプロセスを改善しました。
Step 1: "Why" を可視化する 👀
tl;dv を活用した商談の記録と分析
すべての商談を自動で録画・文字起こしし、いつでも振り返れる状態にしています。特に重要なのは、Meeting Template 機能を使って以下のようなキーワードを設定し、顧客の声を自動で抽出することです。
- Current workflow(現在のワークフロー)
- Motivation(動機・課題感)
- Problems(具体的な問題)
- Feature requests(機能要望)
これにより、「なぜその機能が必要なのか」という背景を確実にキャッチできるようになりました。
Step 2: チームに背景を共有する 🤝
tl;dv + Zapier + Notion による情報の自動蓄積
抽出した顧客の声を、チームの資産として確実に蓄積するために
- tl;dv で生成されたサマリーや文字起こしを Zapier 経由で Notion データベースに自動格納
- 重要な情報が属人化せず、フロー情報ではなくストック情報として蓄積される仕組みを構築
Step 3: 日常業務を効率化する ⚡
Notion AI によるカスタム自動入力
商談後の付帯業務を大幅に削減するために、Notion データベースへのアイテム追加をトリガーとして
- 商談後の御礼メール本文を自動作成
- Salesforce 用の議事録を自動作成
これにより、営業担当者は商談そのものに集中できるようになりました。
Step 4: 今後の展開 🔮
現在計画している改善項目
- Notion AI による要望の集約: 商談 DB から要望をまとめ、要望 DB へ自動起票
- PRD 作成プロセスのサポート: 要望 DB から PRD のファーストドラフトを自動作成
- プロダクトビジョン、競合情報、市場分析、今期の注力ポイントなどをコンテキストとして活用
AI を活用したワークフロー改善:フェーズ 2 🚀
PRD 作成からリリースまでの自動化
AI の進化に伴い、開発プロセス全体の最適化も進めています。現在実験的に動かしているワークフローは以下の通りです。
- Notionに起案アイテムを追加
- 優先順位を確定し、ステータスを着手可能に変更
- ステータス変更をトリガーにGitHub Issueを自動作成
- Notion + Slack + Devin
- Notion MCP + Cursor + GitHub MCP
- Zapier を使ったワークフロー構築などを検討中
- Issueのレビュー
- Claude Code Action などでプルリクエストを作成
- プルリクエストのレビュー・リリース
このように、企画から実装まで一貫した自動化を目指しています。
その他の AI 活用事例💡
問い合わせ対応の効率化
課題
- 問い合わせ対応の履歴がメールやチャットに散在し、ナレッジが属人化
- 類似の問い合わせに毎回対応するコストが発生
解決策
- 全ての問い合わせ内容をNotion データベースに集約
- Notion AIを使って、過去の類似問い合わせがないか検索できる仕組みを構築
情報のサイロ化を防ぐ
課題
- 「あのドキュメントどこだっけ?」
- 「〇〇機能のやり取りどこのチャンネルでしてたっけ、確認漏れないかな」
- 探す時間、人に聞く時間で作業が中断される
解決策
- Notion AIで検索能力を強化(標準検索では見つけにくい情報も発見可能)
- Notion AI コネクターで Slack、GitHub、Google Drive を横断検索
スライド作成の AI 活用
課題
- スライド作成ツールの操作やデザイン調整に時間を取られ、本来伝えたい内容に集中しづらい
- レビューや修正が煩雑になりがち
解決策
- Cursor + Marpを使いスライドを作成
- Markdown でスライドをテキストベースで AI(Cursor)に相談しながらブラッシュアップ
- Marp で Markdown から直接スライド化、見た目の調整も CSS で一括管理
- テキストファイルなので Git でバージョン管理や共同編集も容易
まとめ:AI を「活用する」ために重要なこと 🎯
「解空間」を意識したアプローチ
AI の能力を最大限に引き出すには、インプットとなる情報の整理とワークフローの見直しが不可欠です。特に「解空間」を意識して業務やドキュメントを整備することが重要です。
- 解空間が曖昧だと AI も曖昧な答えしか返せない
- 解空間を明確に定義し、必要な情報を整理しておくことで、AI はより的確な提案やアウトプットができる
- ただし、創造力を豊かにするために意図的に限定しないケースもある
Notion を組織の「脳みそ」に
Watchy では、Notion を中心とした情報集約・AI 活用を進めています。「まず Notion を見よう」「まず Notion AI に聞いてみよう」が当たり前の文化を醸成することで、情報の活用度が大幅に向上しました。
今後の展望
- AI 活用のベストプラクティスを社内で体系化し、誰でも活用できるようにしたい
- プロダクトの要望や問い合わせを自動で分類・優先順位付けする仕組みを作りたい
- tl;dv をもっと活用したい
- AI ファーストで業務や仕組みを設計し直すことが、組織の生産性や競争力向上につながるのでは
おわりに 🌈
AI は単なるツールではなく、組織のワークフロー全体を変革する可能性を秘めています。重要なのは、AI に何を求めるのか、どんな情報を与えるのかを明確にすること。つまり「解空間」を意識した設計です。
私たち Watchy の取り組みが、皆さんのプロダクト開発にも少しでも参考になれば幸いです。AI 活用についてご質問やご意見があれば、ぜひお聞かせください。
Watchyではエンジニアを絶賛募集中です 🙌