Markdown Parserの闇•闇•闇に浸かった話

こんにちは。桑原です。 2度目の投稿となります。 今回は TUNAG のフィードに埋め込まれている Markdown の仕組みについて解説します。 ※ ソースコードは部分的な公開になるため、ご了承ください。

前置き

Markdown とは、テキストで HTML を表現するためのマークアップ言語です。 下記の画像のように、タイトルやプログラムコード、画像の埋め込みなど、多彩な表現が可能になります。

ところがこの Markdown、一般的な記法はあれど、標準化・規格化されていないことをご存知でしょうか? エンジニアの間では、 Markdown への対応はまさに 地獄 と評されてきました。 何故 地獄 と言われているのか、 Markdown の仕組みと散々苦しんだ私の愚痴話をしたいと思います。

網羅するべき多くの記法

ざっとあげると下記の通りです。

  • 文字の強調、イタリック、もしくはその両方
  • Strongタグ
  • 取り消し線
  • ヘッダー(h5〜h1)
  • 区切り線(4種類)
  • HR区切り線(2種類)
  • Codeタグ
  • Blockquoteタグ
  • 点リスト
  • 数値リスト
  • チェックボックス(チェック入り、無し)
  • 絵文字
  • 画像
  • リンク(URLそのまま、文字列にHrefのアタッチ)
  • メール and 電話番号
  • 改行

テキストに正規表現の走査・走査・走査...

TUNAG ではフロントエンドの実装に React を採用しています。 Markdown でのアルゴリズムでは、テキストを正規表現で記法を検知し、 Markdown 用の React Component に置き換える、と言う方法で実装しています。 これを行う MarkdownParser の動きは下記の通りです。

Markdownの記法には大きく分けて下記の5パターン存在します。

  1. 太字のようなそれ単体で成立するもの
  2. Hタグのようにその記法の中でさらに別の記法が成立するもの
  3. Codeタグのように行をまたいで成立し、かつタグの中で別の記法が成立するもの
  4. 改行
  5. 1〜4のどれにも属さない文字列

これらのパターンに分けて、走査のアルゴリズムについて説明します。

1. Delタグのようなそれ単体で成立するもの

これは最も単純なパターンです。 該当する記法としては下記の通りです。

  • 文字の装飾や取り消し線
  • HR区切り線
  • 絵文字
  • 画像

該当する文字列が存在する場合、下記のコンポーネントが実行されます。 decoratedText には該当した文字列が引数として与えられるため、この文字列を del タグでくくって DOM を return するだけです。

const Del = ({ decoratedText }) => {
  const textRegExp = new RegExp(`(?:\\~){2,2}([^\\x00]+?)(?:\\~){2,2}`);
  const textMatch = decoratedText.match(textRegExp);

  if (!textMatch) { return null; }

  return (
    <del className="markdown__del">
      {textMatch[1] ? textMatch[1] : null}
    </del>
  );
};

2. Hタグのようにその記法の中でさらに別の記法が成立するもの

このパターンの場合は 1. の応用で実現します。 decoratedText が該当する文字列になるため、これを更に正規表現(二重が許される記法)で走査する、 replaceToComponentsメソッド を利用しています。 replaceToComponentsメソッド により、該当する正規表現があればコンポーネントに置き換わった戻り値が得られます。

const H1 = ({ decoratedText }) => {
  const textRegExp = new RegExp(`# ([^\\x00]*)`);
  const textMatch = decoratedText.match(textRegExp);

  if (!textMatch) { return null; }

  return (
    <del className="markdown__h1">
      {textMatch[1] ? replaceToComponents(textMatch[1]) : null}
    </del>
  );
};

3. Codeタグのように行をまたいで成立し、かつタグの中で別の記法が成立するもの

Markdownでは画像のような行をまたいだ記法が存在します。

これに対応するため、改行コードを UTF-8\x00 に変換して、テキストすべてを1行の文字列に整えてから正規表現の走査を行います。 ※ \x00を利用するのは、ユーザーのキーボード入力では入力ができないためです ※ 一般的に利用される文字コードではバグの原因となります

下記の正規表現は1行に変換された文字列から Blockquote の記法を検知するためのものです。 これを1行となったテキストに実行することで、 Blockquote の Component に置き換えます。

'> Blockquoteだよ> 二行目> > 段落1> > 段落2'.match(new RegExp(`((^|\\x00)(\\> )+(.*?)(\\x00|$)){1,}`));

しかしこのままでは Blockquote は一行の文字列になってしまうため、先ほど変換した \x00 を使って改行を行います。 Blockquote の場合は、 \x00 ごとに div タグでくくる処理を加えます。 そしてCodeタグの中でさらに別の記法が成立するため、2. と同様に二重で走査を行います。

4. 改行

マークダウンは複数改行を行なっても、一行に変換されるものが一般的ですが、 TUNAG では複数改行をそのまま有効にするように作られています。 これは単に走査された \x00コンポーネントに置き換えるだけの処理になります。

const Line = () => {
  return (
    <span className="markdown__line" />
  );
};

5. 1〜4のどれにも属さない文字列

1〜4 のどれにも属さない文字列はそのまま span タグでくくっただけのコンポーネントに置き換えます。

const String = ({ decoratedText }) => {
  return (
    <span className="markdown__str">
      {decoratedText}
    </span>
  );
};

Markdownだけじゃ足りない、更なる要望

マークダウンの実装だけではなく、下記のような要望を社内やユーザーさんから頂いたため、機能の拡張を行いました。

  • 「...もっと見る」によるフィードの省略
  • 「ナイスプレーしたメンバー」など、マークダウンでないパーツの埋め込み
  • 複数改行をしたい

まだこれだけでなく、たくさんの要望が積もっているため、随時対応していきたいと思います。

最後に

いかがだったでしょうか。本当にざっくりでしたが、Markdownの仕組みを解説しました。 しかし実際にはこの説明ほど単純ではなく、更に地獄が待ち受けているのが現実です。 👻もし挑まれるなら心して掛かるように...💀