こんにちは。スタメンで主にバックエンドの開発を担当している河井です。
今回は Firebase Cloud Messaging(以下 FCM)を利用したプッシュ通知の一括送信について書いてみます。
背景
実は以前にも FCM を利用した通知の記事を書いていて、そこでは各デバイスへの通知1回につき1回 FCM へリクエストをする方法を紹介しました。
しかしサービスが拡大してくると通知先のデバイスも増え、個別にリクエストをしていることによる効率の悪さが目立ってきます。
そこで解決策となるのが複数デバイスへの一括通知です。 複数のリクエストを一回でまとめて送信することでパフォーマンスの向上を期待できます。
複数デバイス通知の仕様について
以前のブログ記事でも触れたように、Ruby には Firebase 公式の SDK はありません。 非公式の Gem もありますが、ここではドキュメントの REST の項目を見て自前で実装してみます。
リクエスト
まずはリクエストの中身を見てみましょう。
--subrequest_boundary Content-Type: application/http Content-Transfer-Encoding: binary Authorization: Bearer ya29.ElqKBGN2Ri_Uz...HnS_uNreA POST /v1/projects/myproject-b5ae1/messages:send Content-Type: application/json accept: application/json { "message":{ "token":"bk3RNwTe3H0:CI2k_HHwgIpoDKCIZvvDMExUdFQ3P1...", "notification":{ "title":"FCM Message", "body":"This is an FCM notification message!" } } } ... --subrequest_boundary Content-Type: application/http Content-Transfer-Encoding: binary Authorization: Bearer ya29.ElqKBGN2Ri_Uz...HnS_uNreA POST /v1/projects/myproject-b5ae1/messages:send Content-Type: application/json accept: application/json { "message":{ "token":"cR1rjyj4_Kc:APA91bGusqbypSuMdsh7jSNrW4nzsM...", "notification":{ "title":"FCM Message", "body":"This is an FCM notification message!" } } } --subrequest_boundary--
FCM のドキュメントではこの形式について特に解説していませんが、これは
"--区切り文字列"
という形式の文字列で始まり- 個々のリクエスト内容を文字列として
"--区切り文字列"
で連結し - 最後を
"--区切り文字列--"
で閉じた - 1つの文字列(テキストファイル)
です。改行はすべて CRLF(\r\n
) を使います。
区切り文字列
にはリクエスト送信時の boundary=" "
で任意の文字列を使用できます。
これは mulitpart/mixed
という形式で、詳しい説明は RFC 2046 に譲ります。
なお、個々のリクエストに含める内容としては個別通知のときと同じものなので、こちらについての詳細は過去の記事を見てください。
レスポンス
レスポンスも同じように、個々のリクエストのレスポンスが1つの文字列になったものが返ってきます。
--batch_nDhMX4IzFTDLsCJ3kHH7v_44ua-aJT6q Content-Type: application/http Content-ID: response- HTTP/1.1 200 OK Content-Type: application/json; charset=UTF-8 Vary: Origin Vary: X-Origin Vary: Referer { "name": "projects/35006771263/messages/0:1570471792141125%43c11b7043c11b70" } ... --batch_nDhMX4IzFTDLsCJ3kHH7v_44ua-aJT6q Content-Type: application/http Content-ID: response- HTTP/1.1 200 OK Content-Type: application/json; charset=UTF-8 Vary: Origin Vary: X-Origin Vary: Referer { "name": "projects/35006771263/messages/0:1570471792141696%43c11b7043c11b70" } --batch_nDhMX4IzFTDLsCJ3kHH7v_44ua-aJT6q--
このバッチレスポンスにはバッチリクエストに含めたリクエストと同じ順番で対応するレスポンスが含まれています。
先程触れませんでしたが、Content-ID: foo
というフィールドを個々のリクエストに入れておくとレスポンスに Content-ID: response-foo
という形で入ってきます。
各リクエストにつきユニークな文字列を使用することでリクエストに対応したものかどうかを確認できます。
注意点として、バッチリクエスト自体の成否と個々のリクエストの成否は独立しているということが挙げられます。
例えば、バッチレスポンス自体は正常に動作したのでステータスコードは 200、ただしあるリクエストの通知先のデバイスが存在せずそのリクエストに対するレスポンスコードは 404 となっている、という状況がありえます。
そのため個々のレスポンスに分割してリクエストの成否を確認する必要があります。
Ruby での実装
一通り仕様については把握できたので、これを Ruby で実装してみます。
HTTP リクエストには Ruby 標準の Net::HTTP
を使います。
リクエストボディの作成
まずはリクエストボディを作成します。 上で触れた形式に沿って、以下のように1行ずつ文字列を足していきます。
boundary = "subrequest_boundary" # 区切り文字列 buffer = "" tokens.each do |token| buffer += "--#{boundary}\r\n" buffer += "Content-Type: application/http\r\n" buffer += "Content-Transfer-Encoding: binary\r\n" buffer += "Content-Id: #{token}\r\n" buffer += "Authorization: Bearer ya29.ElqKBGN2Ri_Uz...HnS_uNreA\r\n" buffer += "\r\n" buffer += "POST https://fcm.googleapis.com/v1/projects/myproject-b5ae1/messages:send\r\n" buffer += "Content-Type: application/json\r\n" buffer += "accept: application/json\r\n" buffer += "\r\n" body = { message: { token: token, notification: { title: "FCM Message", body: "This is an FCM notification message to device 0!" } } } buffer += body.to_json buffer += "\r\n" end buffer += "--#{boundary}--\r\n"
区切り文字列には公式ドキュメントに従って subrequest_boundary
としています。
Content_id
にはデバイスの識別トークンを入れてみました。
なお制限として、1回のリクエストには最大500個までトークンを含めることができます。
バッチリクエストの実行
curl で書かれているバッチリクエストを Net::HTTP の形式に変換します。
require 'net/http' require 'uri' uri = URI.parse("https://fcm.googleapis.com/batch") request = Net::HTTP::Post.new(uri) request.content_type = "multipart/mixed; boundary=\"#{boundary}\"" request.body = buffer # <= ここでさっき作った文字列を入れる req_options = { use_ssl: uri.scheme == "https", } response = Net::HTTP.start(uri.hostname, uri.port, req_options) do |http| http.request(request) end
変換には curl-to-ruby を使いました。
content_type で区切り文字を指定し、request body に先ほど作成したバッチリクエストボディを入れます。
レスポンスボディの解析
バッチリクエストのレスポンスはリクエスト時に指定してた文字列で区切られていて、かつバッチリクエストと同じ順番でレスポンスを含んでいます。
まずは区切り文字列を使ってレスポンスを分割します。
responses = response.body.split(boundary)[1..-2]
レスポンスは --区切り文字
で始まり --区切り文字列--
で終わることを思い出すと、分割した配列は
['', res1, res2, ... , '--']
となるので先頭と末尾の要素は除いておきます。 個々の要素は以下のような文字列です。
Content-Type: application/http Content-ID: response- HTTP/1.1 200 OK Content-Type: application/json; charset=UTF-8 Vary: Origin Vary: X-Origin Vary: Referer { "name": "projects/35006771263/messages/0:1570471792141696%43c11b7043c11b70" }
ここで正規表現でステータスコードと content_id を抜き出してみます。
code = res.match(/HTTP\/1\.1 (\d{3})/)[1] token = res.match(/Content-ID: response-(.*)\r\n/)[1]
あとはこれらの情報を元にリトライなりしましょう。
まとめ
FCM を利用して複数デバイスに一括で通知する方法を紹介しました。
一括で送信することでリクエスト数を大幅に減らすことができます。
今のところ一括送信を利用することによる配信の遅延も感じていないので、パフォーマンスにお悩みの方はぜひ試してみてください。
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