
はじめに
こんにちは!株式会社スタメンの ちぇる です!
長らく動画変換を支えてきた Amazon Elastic Transcoder(以下 Elastic Transcoder)の EOL(サポート終了)が発表されました。AWS 公式でも AWS Elemental MediaConvert(以下 MediaConvert)への移行 が強く推奨されています。
弊社が運営する「TUNAG」でも、これまで Elastic Transcoder と MediaConvert が混在していましたが、この度 MediaConvert への全面移行を完了しました。本記事では、この移行プロジェクトを通じて学んだ「変換システムの思想の違い」と「設計の健全化」についてご紹介します。
動画変換システムの仕組み:思想の違い
両サービスを比較すると、動画変換に対する根本的な設計思想が異なることに気づきます。
Elastic Transcoder:Pipeline 中心設計
Elastic Transcoder の設計思想は、一言で言えば 「固定された変換ライン(Pipeline)に Job を流し込む」 方式です。
- Pipeline:入出力バケットや IAM ロール、SNS 通知などを定義する。
- Job / Preset:解像度やコーデックを定義し、Pipeline にキューイングする。
あらかじめ定義された「変換ライン」の処理能力に応じて順次実行されるため、管理はシンプルですが、入力動画の特性に合わせた柔軟な調整には限界がありました。
MediaConvert:Job 中心設計
対する MediaConvert の思想は 「動画 1 本ごとに詳細な注文票(Job)を作り、Queue でさばく」 方式です。
- Job:入出力設定、動画・音声の細かなパラメータ、加工設定など全ての情報を持たせる。
- Queue:並列実行数や優先度を制御する。
MediaConvert には Pipeline という概念がなく、動画ごとに Job を定義します。そのため、「入力動画の特性に合わせて解像度・ビットレートを動的に最適化する」 といった、より高度でプロフェッショナルな制御が可能になります。
「Pipeline(変換ライン)中心」から、より柔軟な「Job(注文票)中心」への転換が、このリプレイスの本質といえます。
移行で直面した「厳格さ」という注意点
移行を進める中で、特に注意が必要だったのが 「音声のみ(映像トラックなし)のデータ」 の扱いです。
「よしなに」の Elastic Transcoder、「厳格」な MediaConvert
Elastic Transcoder: 映像+音声の設定になっているプリセットに「音声のみ」のファイルを投げても、足りない要素(映像)を自動でスキップして「音声のみ MP4」をよしなに出力してくれます。
MediaConvert: 商用レベルの品質を担保するため、バリデーションが非常に厳格です。映像設定があるのにソースに映像がない場合、「設定と入力が一致しない」としてエラーになります。(実装側で、入力に応じて Video Selector を動的に除外するといった制御が必要となります。)
そのため、Elastic Transcoder では「よしなに」処理されていたファイルが、MediaConvert ではエラーとなり、「以前は投稿できていたファイルがアップロード(変換)できなくなる」という問題が発生する可能性があります。
厳格さが生む、運用の健全化
一見すると MediaConvert は手間がかかるように見えますが、これはサービス運営において大きなメリットになります。
例えば、これまでは動画アップロード導線に誤って音声データが混入した場合でも、「映像のない真っ暗な動画」として変換されてしまい、タイムラインに黒いフレームが表示されるといった状況が起こり得ました。今回の移行に伴い、「仕様の曖昧さ」を排除することで、コンテンツの種別に応じた最適な見せ方を強制できるようになったのです。
具体的には、音声データについては「音声専用のアップロード導線を用意する」か、「サムネイルを付与したうえで動画としてアップロードする」かの、いずれかの方法を取ることになります。
こういった仕様は一般的で、例えば YouTube でも音声データをそのまま動画としてアップロードすることはできず、公開には映像トラック(静止画を含む)が必須となっています。
まとめ
TUNAG には複数の動画投稿導線が存在しており、新旧のシステムが混在していましたが、今回のリプレイスを通じて MediaConvert への一本化が完了しました。
サービスを運用する中で、EOL によるリプレイスを迫られるのは避けられない宿命です。しかしそれは同時に、「システムの曖昧さを整理し、設計を健全化する絶好の機会」 でもあります。
今回の移行を経て、TUNAG の動画基盤はより堅牢で、今後の進化に耐えうるものになりました。本記事が、同じく動画変換基盤の運用やリプレイスに取り組んでいる方々の参考となれば幸いです。
最後に
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