こんにちは、スタメンの小林です。
登壇から少し時間が経ってしまいましたが、2018/03/10 に スタメンオフィスにて、開催された「第3回名古屋若手Webエンジニア交流会」で講演した際の資料を公開します。当日は、名古屋を中心に活躍する若手エンジニアがたくさん集まってくれました。 少しでも参考になればと思い、赤裸々に自分の若い頃を振り返ってみましたが、少しでも参考なる方が増えればと思い、こちらでも紹介させていただきます。
https://speakerdeck.com/lifework/di-3hui-ming-gu-wu-ruo-shou-webensiniajiao-liu-hui-20180310
キャリアパスついて
資料の中の、技術、人事、事業の3軸は、以前キャリアパスを相談されたときに、大きく分けての3つの軸があると図示したことに起因しています。
技術は、もちろん プログラミング、セキュリティ、インフラなどの各種技術でのスキルアップを意味します。最初はアサインされたチームの担当エンジニアとして何らかの技術スキルを伸ばすところから始まる方がほとんどだと思います。
人事は、採用・教育・評価に代表されるチームのマネジメントです。30歳前後でチームを任されて、徐々に技術から離れるキャリアを選ぶ方も多いし、逆に技術にこだわりを持ってチームマネジメントよりも、現場での経験を嗜好する方もいます。会社の状況的に選択の余地が無い場合もありますが、エンジニアは転職によってキャリアチェンジすることが可能で、他の業界よりも意識的にキャリアを選ぶことができると思います。
事業は、企画・ディレクション・予算管理などの領域です。エンジニアとしてプロダクトを創っていると、UIや仕様にアイデアが反映されることもありますし、それが続くと新機能の要件定義やプロダクトのロードマップを任されることになり、事業よりの仕事が増えることがあります。エンジニア経験があることは、社内外のエンジニアとコミュニケーションが取れたり、世の中の技術的なトレンドを把握できるなど、事業を企画・運営する上で大いに役立ちます。いつしか、企画方面が主になり、コードを書かなくなるエンジニアも多いと思います。
私は、20代のエンジニアから始まり、30代でエンジニアチームのマネジメント(いわゆる VPoE)を経験することで人事と事業の経験を深め、40代はスタメンのCTOとして技術面を伸ばしています。20代はもっと事業よりのキャリアを嗜好してきましたが、実際に事業方面の経験を積む中で、自身の適正・興味が技術+人事にあることに気づき、40代直前にスタメンにCTOとして参加するキャリアにつながっています。
経験したからこそ、自分の適正や嗜好に気づくことも多いと思います。食べ物の好き嫌いは食べてみないとわからないように、キャリアや価値観は、試行錯誤する中で、明確化していきます。特に若い内は自分の可能性を広げ、適正に気づくためにも、広く経験してみるのが良いと思います。
ITエンジニアは、非常に歴史の浅い職業です。もしかして、定年退職した人も数えるぐらいしかいないのではないでしょうか。このため、キャリアパスについても確固たる方向性があるわけではありませんし、むしろ技術の多様化と深化が進むにつれて、様々なキャリアが生まれていくのだと思います。資料に書いた内容も、こういったキャリアを歩むべきだという教科書ではなくて、「こういった考え方を持った人もいるんだ」的な話のネタとして、キャリアについて迷うエンジニアに読んでいただき、参考になれば嬉しいです。
20代について
謎 の ウニ と ナマコ のイラストがありますが、資料だけではわかりにくいと思うので補足させてください。
この業界で活躍している人たちを観察してみると、皆さん若い頃に頭角を現して、抜擢されて、成果を出して、さらにチャンスを得て成長ペースを加速させていく・・・ という方が多いと思います。
若い頃に頭角を表しているときは、頑張って成果をだしているからこそ(多めに)自信を持っていたり、事業や技術に当事者意識が高いからこそ他のメンバーへの要求水準が高かったりして、言動が尖っていて、他のメンバーとぶつかることも多いかと思います。でも、立場が変わって組織や事業の責任者になるにつれて、リーダーシップやフォローワーシップを学び、自分の成果からチームの成果へ意識が移っていき、様々な経験を積むことによって(中身の熱意は変わらないまま)言動が丸くなっていくのではないでしょうか。
これって、はじめ尖っていたウニが、成果を出して立場が変わる中で荒波に揉まれ成熟していく(トゲの使い方がうまくなっていく)感じがしていて、 ウニ + ナマコ みたいな例えになりました。逆に、はじめ丸く小さいナマコは、あとで尖ることはないんだと思うんです。だからこそ、チャンスが多く生まれるIT業界では、多くの経験を積んで抜擢されてチャンスを得るためにも、生意気なぐらい尖って成果を出したほうが良いと思っています。
皆さんの周囲にいる尊敬する先輩たちは、20代のころ間違いなく、尖っていたと思います。はじめから成熟している人なんて、(ほとんど)いないはずなので、若いうちは尖って行きましょう。
20代に本とコードをたくさん読み、多くの偉大な先輩方に出会ったことが、自分自身の視野/視座を上げ、後に大きく活きました。毎日、検索しながら仕事をしていると思いますが、情報収集する際は一次情報を意識して読むことが、効率的に理解を深められると思います。GitHub リポジトリの README や Rails ガイド、AWS ドキュメント などの 公式ドキュメント はもちろんですが、ソースコードが最も正確、最新な一次情報源です。ガンガン読みましょう。 逆に、Stack Overflow や Qiita など、部分的な情報は二次情報といえます。二次情報は、正確性に欠け、場当たり的で、古くも更新されていません。二次情報は問題解決のきっかけとして利用し、常に一次情報(本家の正式なドキュメント)にアクセスするようにしましょう。
また、本は一つの分野・トピックを知るには非常に効率的です。いろんな本を読むと、本を選ぶ選球眼も身につき、さらに効率的に本から情報収集できるようになります。学生の頃、所属していた研究室の教授から「なんでもいいから月に1万円本を読め」と教えられ、新卒から数年ぐらい続けました。また、尊敬する人、すごいと思った人にオススメの本を教えてもらい、とりあえず買って見る。ということも続けています。本は、専門家が知識をまとめたものです。こんなに効率的な学習方法は無いと思います。自分の視野を広げるため、知識を深めるために、たくさん読書しましょう。
新卒で入った会社の先輩が、打ち上げでごちそうになってお礼をした際、「恩は、俺に返すんじゃなくて、後輩に同じことをしてあげて返してね」とおっしゃったことをよく覚えていて、今でも実践してます。多くの尊敬する先輩に出会い、先輩のようなエンジニアになりたい、あんな仕事がしたいと思えたことが、今につながる原点になっています。
仕事観、人生観は20代の前半で形成されるとも言われます。前述したような、私の習慣や考え方は、20代の前半で得た物が多いです。20代は自分の可能性を広げられるように、尖るほど行動し、本や人から多くのことを貪欲に学ぶのをオススメします。
30代について
30代は、ほんとに多くのことを学びました。
まず、挫折について。誰しも大小の差はあると思いますが、挫折すると思います。でも、挫折するような環境だから成長もするし、成功へ近づくのだと思う。挫折から自分の適正を認識することもるし、必ずしも努力と根性で挫折を乗り越える必要はないと思う。大事なのは、挫折から学ぶこと。 プレゼン資料中の「楽しむことをあきらめない。」というフレーズは、2006年春のモスバーガーの採用キャッチコピーです。初めての転職直後に、心身ともにしんどかったときに、たまたまオフィス近くのモスバーガーで、このコピーに出会えたことは運が良かった。このコピーをきっかけに、吹っ切れたのをよく覚えています。ベンチャーでの仕事って、挑戦的な試行錯誤も多いし、うまくいかないことが多いと思います。 どんなときも「楽しむことをあきらめない。」ように、前向きに捉えることはすごく大切です。このコピーに出会ってから10年以上立ちますが、今では自身の人生観としてしっかり根付いています。
昔読んだ日経ビジネスのインタビュー記事の中で、「20代は自分のために仕事をし、30代は組織のために仕事をし、40代は業界のために仕事をし、50代は世のために仕事をしないさい」というような言葉がありました。
今思うに、20代の頃は自分のために仕事をしていました。 30代は、チームで仕事をすることの強さ、やりがい、楽しさを実感したことが大きかったです。また、チームをマネジメントする中で、人を観察し、加点法で捉えて、長所を見つけ、長所を活かしたアサインをすることで、チーム全体の成果を最大化することを学びました。 私は、マネージャーとして「触媒」でありたいと思っています。少量の触媒が、化学変化を劇的に加速・最大化することがあります。私がマネージャーとしてうまく振る舞うことで、触媒のようにチームが有機的に連携して、成果を最大化できたらな。。。。と工夫する日々です。
30代はホントいろいろなことが起きました。CTOと主夫を両立するエンジニアが名古屋で創業するまでに書いたとおり、前半34歳までは自分でイメージしていた人生でしたが、35歳以降は毎年想定外でした。でも、周囲を見ていると、30代は内容こそ違えど、良くも悪くも想定外の出来事が起きるのだと思います。転職して環境が変わったり、自分自身の役割が変わったり、結婚や出産などで家庭環境が変わったり、人生の変数が増えるため、想定外の出来事も起きやすくなりますよね。
正直しんどいと思える日々もたくさんありましたが、多くの出来事や出会いから自身の価値観や多様性を理解できたのは大きかったと思っています。皆さんも30代はいろいろな変化が訪れると思いますが、起きた変化は変えられないので、ぜひ前向きに捉えて未来に活かしてください(投げやりですみません...
40代について
いま、41歳なので、40代はまだ始まりなのですが、CTOとしてスタメンの創業に参加したことで、これまでで一番新鮮な仕事をしています。「塗り絵 と違う 白いキャンパス の緊張感。」と資料に書きました。これは、前任者が始めたことを維持・拡張していくのと、創始者としてゼロから始めるのは、こんなに違うのだと実感したことです。未来を考えて、方向性を決めること。決めた方向性が会社や事業の未来に大きく影響すること。でも、怖くても、決めないと、前に進めないこと。(絵は描かないんだけど)白いキャンパスに、最初の線を引くような緊張感&ワクワクは、創業以来今でも続いてます。
また、私が一番コードをたくさん書いたのは、スタメンを創業してからの1年の39-40歳です。Web業界には、エンジニアの35歳定年説は無いと思います。むしろ、これまでの経験が武器になるし、まだまだ成長できると思います。35歳は熟成なんです。ただし、エンジニアとして、知的好奇心や成長意欲を失わないこと、経験にすがって過去の実績に油断したり、老害にならないことは、意識したいと思っています。詳細は、スタメンを創業して1年半の振り返りとこれから でも振り返っていますので、よろしかったらこちらも。
皆さんもご自身の10年前、20年前を振り返ってみて、もっと大人になっていると思っていたのに、、、と思われるかもしれませんが、私も同様で、20代に頃に思っていた40歳よりも、実際の自分は全然大人ではありません。スーツをピシッと着こなしてるかと思ったら、Tシャツ、フリース、パーカーばっかり着てます。
でも、思っていたよりずっと熱意は失ってないし、むしろできることが増えて、やりたいこと、チャレンジしたいことが増えています。実際、2017年は20代の頃よりもたくさんコードを書きましたし、創業から1年半経っても、スタメンでやりたいことは全く尽きません。10年後に「よくやった!」と自分を褒められるように、40代も頑張ってみようと思います。
最後に
この業界は非常に変化が激しく、今日の当たり前もあっという間に、普通ではなくなります。同様に、理想とするキャリアも変わっていきますし、現在は想定できない新しいキャリア、仕事もできていると思います。
とはいえ、未来のキャリアは過去と現在の自分の延長にあるものです。資料にある通り、仕事をする上での価値観を知って、自身の強みを把握し、その上で成果を出してキャリアを自ら選択できるように準備しておく。それでも、準備した通りに行かないのが人生なのでしょうが、準備していないと環境の変化に翻弄されてしまうかもしれません(それが悪いとも言い切れないけど)。
未来に突然変異は起きない、未来は徐々に作るもの、だからこそ思い通りに行かないかもしれないけど、自分の軸に沿って未来を描いて、行動してみましょう。10年後に、いい仕事したなぁ。と思えるように。
最後に、実際に小林に会って、もっと詳細を聞きたいという方がいらっしゃったら、ぜひ、Wantedly などから、ご連絡ください。スタメンのオフィスで、まったりお話ししましょう ♪